七十歳代後半あたりから、生きものの存在の基本は「土」なり、と身にしみて承知するようになって、幼少年期をそこで育った山国秩父を「産土」と思い定めてきた。
そこにはニホンオオカミがたくさんいた。明治の半ば頃に絶滅したと伝えられてはいるが、今も生きていると確信している人もいて、私も産土を思うとき、かならず狼が現れてくる。群のこともあり、個のこともある。
個のとき、よく見ると螢が一つ付いていて瞬いていた。山気澄み、大地静まるなか、狼と螢、「いのち」の原始さながらにじつに静かに土に立つ。
嵐山光三郎さんがこの句を読んで、「あんたの遺句だ」と言ったのを覚えている。
建立記念誌
所在地:
皆野椋神社 所在地住所等:
埼玉県秩父郡皆野町皆野238